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日記です
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 それは、積み木で遊んでいる少女の姿だった。

 太郎は、平屋の一軒家の子供部屋に立って、懸命に遊ぶ少女の姿を見ていた。

 積み木が、何の形とは無くただ積み上げられている。

 ひとつ、ふたつと。

 少女はいくつぐらいなのだろう。

 おかっぱの頭に、赤いジャンバースカートを着ている。

 積み木遊びに飽きると、少女は縁側に出て指をしゃぶりながら空を眺めた。

 そうして、どれくらいの時間が経ったか、少女はポケットから輪ゴムを大量に取り出した。

 そして、一つ一つつなげていった。

 長い鎖のようになるまで少女は輪ゴムをつなげていった。

 「あの・・・」

 太郎は少女に声をかけた。

 しかし、少女は太郎の声が聞こえないようだった。

 もくもくと輪ゴムをつなげる手を止めない。

 一体、ここはどこで、僕はどうして今ここにいるのだろう、と太郎は部屋を見渡した。

 壁に掛けられた時計は12時25分を指していた。

 コツコツコツ・・と秒針が時を刻んでいた。

 
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 太郎は喫茶店のママの箱の色に見覚えがあった。
 
 薄いブルーの箱である。

 これは茎子に指輪をプレゼントしたときとまったく同じ色味なのだ。

 偶然だが、それは太郎の好きな色だった。

 「ありがとうございます」

 「いいわよ。この店に来るお客さま皆様に差し上げているのよ」

 「中、見ていいですか」

 「ええ」

 手のひらよりやや小さなその箱のふたを太郎はそっと開けた。

 すると、どうしたことだろう。

 太郎は急に強烈な眩暈をを覚えた。

 あわてて顔を上げると喫茶店のママの顔がぐるぐるとまわっているように見える。

 「・・あの・・僕ちょっと・・」

 太郎はその場にしゃがみこむようにゆっくりとひざを着き、倒れた。
 喫茶店のママは、店の奥に引っ込んだ。

 すぐさま、店内に「蛍の光」が流れ始めた。

 「蛍の光」は全国共通で「店は閉店ですよ」とアピールするための曲となったのはいつからなのかと太郎は思った。

 喫茶店のママが再び太郎の側に歩み寄ってきた。

 靴がいつの間にか、蛇皮のヒールのある靴に変わっていた。

 「ごめんなさいね。そろそろ閉店なのよ。急かせちゃってるかしら?ごめんなさいね。あたくしにも用事があるの」

 ポケットから大きなイヤリングを取り出し耳たぶにつけにくそうにはめながら喫茶店のママは早口で太郎にしゃべった。

 「あ・・そ、それじゃ早く食べます」

 太郎は皿に盛った料理を口に掻っ込む。味は悪くないのに、こういう食べ方はしたくなかったが、何せ状況が状況だった。仕方なかった。

 「そうそう、あたくしね、あなたに渡すものがあったわ」

 太郎はすばやく口を上下に動かしながら、喫茶店のママの手にある小さな箱を見た。
 「じゃぁいただきます」

 太郎は入り口付近に置かれたバイキングスペースでパンとサラダと肉を皿に乗せて、その奥の席に座ろうと歩みを進めた。

 すると壁一面時計が飾ってあった。

 時計も骨董屋にあるような年代ものの柱時計から現代の置時計からデジタル時計まで様々だった。

 チクタクチクタク、コツコツコツコツ、チッチッチ・・・

 様々な時計の音が不揃いに鳴っている。

 「あの、これは・・」

 手に皿を持ったまま、太郎は喫茶店のママの方へ振り返った。

 「時計よ。いいでしょ。私のコレクションなの」

 「コレクション・・・」

 まぁ、時計屋で飯を食っていると思えばいいのか、と太郎は思った。

 気を取り直して席に着くと、太郎は食事を取り始めた。

 コツコツ、チクタク、ゴーンゴーン・・・

 店内にBGMが何も鳴っていない分時計の音が閑散とした店内に鳴り響いていた。

 「あなた、どこから来たの?」

 喫茶店のママが太郎の右脇からホットコーヒーを差し出しながら、喋りかけてきた。

 「どこ?えーと、家です」

 「そうなの。家はアパートなの?あなた学生さんかしら?」

 「いえ、学生じゃないですよ」

 「若く見えるわね」

 よく言われることだと思いながら、太郎は愛想笑いをしてうなずいた。そして、この年になってまだ音楽を目指しているとそういった雰囲気になるのかとも思った。

 「ママさんはおいくつなんですか」

 「0才」

 「え」

 喫茶店のママはピンク色のめがねの真ん中をぎゅっと押し上げ、腕時計を見た。
 「あら、いけない、もうこんな時間」

 つられて太郎も自分の時計を見た。

 12時15分だった。

 

 

 
 喫茶店に入るとそこにはバイキング形式にたくさんの食料が置いてあった。

 サンドウィッチ、パスタ、サラダ、ローストビーフなどなど。

 客はまだ居ない。

 太郎は腕時計を見た。12時5分だった。

 「あら、こんにちは」

 太郎に声をかけてきたのは、口紅の赤い喫茶店のママだった。巻き毛の金髪にピンク色のめがねをかけていた。そして、なぜかタバコを吸っている。

 「あの、お食事代金はいくらでしょうか?」

 入り口の看板には入場料しか明記されていなかったので、食べ物の値段がわからなかったのだ。

 ママはタバコの煙を吐き出すと、そういえば・・というかんじで目をぱちくりさせながら言った。

 「タダよ,タダ」

 「え」

 入場料に食事代が含まれていたのかと太郎は思った。

 茎子の話はこの辺にしておくことにする。
 太郎は今週の日曜日は茎子に会うのを断り、とある喫茶店に行こうと思っていた。
 近所にある「ブラック」という喫茶店である。
 なんでもそこは昼の12時から30分のみの営業らしい。
 30分で何の営業ができたものか、太郎は興味本位で行って見ようと思っていたのだ。
 もうかれこれ7年ほど前からその店はあるらしい。
 太郎は携帯電話を取りだした。3年前に購入した携帯電話はところどころ塗装がはがれていた。
 呼び出し音が鳴ってすぐに茎子は電話口に出た。

 「あーともくん!」

 「あ、どもども。で、今週日曜日、ちょーっと無理だからまた来週会おうよ」

 「そうなんだぁ・・ううん大丈夫。ちょうどママにお菓子教室誘われていたから、そっちにいくね、あーはーい。じゃあともくん、また」

 茎子はそうい言うと、職場の人に呼ばれたらしく、あわただしく電話を切った。

 そして日曜日、太郎は喫茶店「ブラック」の前に立っていた。

 入り口には「鑑賞料500円」の看板があった。脇には小さな貯金箱。こちらにお入れくださいの文字が貯金箱に油性マジックで丁寧な文字で書かれてあった。

 太郎は500円玉をそっと貯金箱の口に入れた。
 世の中は便利になってきていて、地球が一回転しようが関係なく、24時間エブリバディカミング、誰でも受け入れ体制オーケーな場所が、コンビニエンスストアをはじめインターネットカフェ、ファミリーレストランなどなどと形態は違えどそれらは、行く当てを失った人にとってはオアシスのように楽園のように存在している。

 これから紹介する彼の名を太郎としておこう。
 太郎はいわゆる音楽を愛する青年だった。年は31歳。彼女らしき人はいて、結婚も近々可能性としてはあるらしい。
 しかしながら、結婚ということは太郎にとってうすらぼんやりと現実感の持てないジャンルであった。
 先日彼女の茎子が「私、両親に太郎のこと紹介したいんだけどね」と始まった会話の先は、部屋の網戸にしがみついたバッタの触覚の動きしか覚えていない。
 
 結婚はしたくないと太郎は正直なところ思っていた。
 茎子は真面目に家事もこなす将来良妻賢母間違いない28歳。彼女の働き先の福祉施設でも笑顔を絶やさず利用者からはすこぶる評判が良い。
 髪も一度も染めたことがないのだろう。直毛のおかっぱの黒髪が太陽の光に照らされて光る様子はまるでカラスの羽の様であった。完璧なキューティクルに守られた美しい髪だった。

お父さん、お母さん、今まで大切に育ててくれて、本当にありがとう
ございました。私はお父さんと、お母さんがいる、いつも楽しい家が本当に好きでした。
お父さんは、日曜日にはよく、遊んでくれました。夕方暗くなってボールが見えなくなるまでキャッチボールをしてくれたこと、忘れません。仕事で忙しくても、ぜんぜんそんなそぶりを見せずに、旅行に連れて行ってくれたり、プールに連れて行ってくれたり、家族サービス満点で嬉しかったです。お父さん、本当にありがとう。
お母さんは色んな料理をつくってくれました。いっしょに白玉団子をつくったり、たこ焼きを100個焼いて楽しく食べたり、運動会の日には大きな大きなおにぎりをたくさんつくって家族みんなでにこにこして食べて幸せでした。楽しいごはんをお母さんありがとう。
私は今日から●●さんと一緒に生きていきます。でも、私がお父さんと
お母さんの子供であることは、ずっと変わりません。
これからは毎日顔を合わす事はなくなってしまうけれど、どこにいても
いつでも、お父さんとお母さんの健康を祈っています。これからも元気でいてください。
 最後に●●さんのお父さん、お母さん、●●さんを優しい人に育ててくださってありがとうございました。●●さんのよき伴侶となれるよう努力していきます。今後とも温かく見守っていただけますよう、宜しくお願い致します。


 両親への手紙です
 
 おっさん、おかあさん、いま、大事な一区切りなので、ここで、ひとつ、メッセージを伝えようと思います。

 まず、おっさん。

 おっさんは、成人した私から見ると、びっくりするような会社組織の中で、ときに歯をくいしばり、時に仲間と酒を飲みながら交流し、仕事をしてきたんですね。わたしには到底できないことなので、今更ながらすごいとおもっています。そして、そういう忙しい中でも、小さい頃はよく、キャッチボールをしてくれたり、アスレチックにバーベキューに旅行に、たくさん遊んでくれて、とっても嬉しかった。子供相手に時に優しく、時に大人げなくムキになって遊んでくれて、そういうところがおっさんぽくて、おもしろかったです。
 わたしも物心ついてから、大変なこともあったけど、いつも結局なんとかなったのは、おっさんが見守ってくれたからだと思っています。
 おっさん、ほんとうにありがとう。

 これからも、趣味のマラソンずっと続けて、いつまでも走り続ける人選をおくってください。



 このところ、胃の調子と、精神のバランスがよくないっす

 やっぱりなんだかんだ、今後のことが気になって、プレッシャーになってるのかな・・・

 わたしは、なんでも、調子がいいとき無理矢理詰め込んでがんばろうとしてしまうクセがある。

 これからは、すこしづつ意識的に動くことを心がけたいと思う。
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 時速0.1キロで生きてます。
 趣味はコンビニに行くことです。最近はファミリーマートが好きです。色がかわいい!
 季節の風を感じることも好きです。
 人工物よりは自然物がすき。檜の匂いが好き。
 核心をずばっととらえた、文章が好き。
 本を読んで色んな人に会うのも好きです。 
 無理せずに、自分を活かして生きていこう♪
 (あ、あと、それから犬のきままなところも好きです。)
 
 
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